ソヴェト文学に高位を占めるミハイル・ショーロホフの大長編小説の映画化。この原作は一九二八年、作者二十一歳の時から筆をおこされ、人間的成長とともに書き進められて、十余年後に完成された。ドン河流域のコサックの民族叙事詩のなかに、社会主義の時代における個人主義の悲劇が追求され、現実の多面性が、大河小説の流れのうちにとらえられる。脚色と監督は「若き親衛隊」のセルゲイ・ゲラシーモフ、撮影はウラジミール・ラポポルト。音楽はユーリー・レヴィティンである。原作の舞台となっているウクライナの小村に、コサックの集落が復元され、五カ月にわたる大々的現地撮影が行われ、スタジオや、レニングラードでの革命のシーンにも、周到な準備と日数が費やされている。出演者は「汽車は東へ行く」のピョートル・グレボフ、未輸入「未完成の物語」のエリナ・ビストリスカヤ、ジナイーダ・キリエンコ、ダニロ・イルチェンコ、ニコライ・スミルノフ等。考証にN・オフリコフスキーとS・クジノフが当っている。